ミチコとハッチン
ついに、ハッチンに初恋の季節が訪れる。今まで孤児院、ひどい里親のもとでの奴隷生活と、恋とは全く縁がなかったのだが、バイクの修理の為に立ち寄った町の本屋で、彼女はレニーニという男の子に出逢う。しかしながら、惚れたのはレニーニの方で、ハッチンは初めは積極的に接してくる彼に戸惑いながらも、だんだん惹かれてゆく。
レニーニは本屋で働いている、ハッチンと同い年くらいの少年で、「雨の中のトッカーノ」という本を見ていたハッチンに、一目惚れをする。レニーニの早熟さと言うか、積極的な姿勢が、子供なのにとってもかっこいいのだ(いくら好きな子が出来たからって、出逢ってすぐに鐘のある教会での待ち合わせを提案するなんて、にくい奴じゃないか)。きっとハッチンは心の何処かで惹かれていたのだが、何となくその好意を拒否してしまう。それに、バイクが直ったら、ハッチンはこの町を去らねばならないのだ。
そんな中、彼女はレニーニについて、衝撃的な事を本屋の店主から聞く。彼は今、ミチコとハッチンが間借りしているアパートであった爆発事故により、記憶を失っており、いつかそれまでの記憶は戻るらしいのだが、かわりに記憶を失っていた間の事は、全て忘れてしまうのだそうだ。つまり、ハッチンの事も。どうせ忘れられてしまうのだ、とますますレニーニを拒むハッチンだったが、レニーニは言う。記憶がない今の自分だって、一歩一歩大地を踏みしめて生きているのだ、と。
翌日の出発の日、アパートの前にレニーニの姿を見付けたハッチンだったが、彼は事故より前の記憶を取り戻していた。しかし、ハッチンの事は忘れていなかったのだ。間違いなく、これはハッチンの初恋であった。別れがとても苦しい、と泣くハッチンを抱き締めるミチコ。二人が、親子だけではないような、不思議な絆を持っている事も感じさせるシーンだった。